石鎚山サイクリングコースの絶景は誰でも楽しめる。
ライダー兼トレーナーに聞く

石鎚山サイクリングコースの絶景は誰でも楽しめる。ライダー兼トレーナーに聞く

石鎚山サイクリングコースの絶景は誰でも楽しめる。ライダー兼トレーナーに聞く
Fun & Fitness

原生林や高原、高山植物の群生や渓谷など、ほかでは見られない絶景が大きな達成感を与えてくれる、石鎚山系のサイクリングコース。じつはe-BIKEなら初心者でも完走できるなど、走り方によって幅広い実力の挑戦者を受け入れる懐の深さを持っています。

今回お話を聞いたのは、自転車をこよなく愛するサイクリストであり、サイクリストのための体幹トレーニングを行うトレーナーとしても活躍する、愛媛県出身の窪田三思さん。初級者、中級者でも走れる石鎚山系のおすすめコースや注意点、アップダウンの激しい山道を完走するために鍛えておくべきポイントなどを教えていただきました。

石鎚山サイクリングコース攻略の必需品は「防寒具(雨具)・リペアキット・行動食」

──もともと窪田さんは石鎚山系の未舗装路をマウンテンバイクで走っていたそうですね。

窪田:そうなんですよ。初めてロードバイクで走ったのは4年ほど前のことでした。『石鎚山ヒルクライム』というロードレースに出場するサイクリストのパーソナルトレーニングを担当したんです。「ものは試し」と一緒に走ってみたら、びっくりするくらいついていけなくて……。体力には自信があったのでショックでした(笑)。

そこからロードバイクに乗って鍛え直そうと決意したんです。愛媛県がサイクリストの観光誘致に力を入れていることも知っていましたから、自分がサイクリストとして実践したことを、トレーナーとして伝えていければいいなと考えるようになりました。

窪田三思さん

窪田三思さん

──マウンテンバイクとロードバイクでは、山から感じる印象も変わりますか?

窪田:全然違いますね。マウンテンバイクによるダウンヒルは、スリルもあってとても楽しいんですが、せっかくの美しい景色を見ている余裕がない(笑)。その点、軽快に長い距離を走れるロードバイクは、石鎚山系サイクリングコースのような絶景ルートには最適です。長く険しい道のりを自分の力で走破する充実感や達成感は、いつ味わってもいいものだなと思います。

石鎚山系では、雄大な山々が織りなす絶景が待っている

石鎚山系では、雄大な山々が織りなす絶景が待っている

──石鎚山系サイクリングコースに挑戦するうえで、持っていくと良いものは何でしょう。

窪田:長い距離を走るときには、防寒具(雨具)・リペアキット・行動食の3つを必ず携行するようにしています。特に石鎚山系のような標高の高いエリアは天候が変わりやすく、いつ雨に降られるかわかりません。太陽が出ていたとしても、平地と比べて気温も低く、風も冷たいので、最悪のコンディションに耐えられるよう、入念な準備をしておくことが大切です。

また、行動食はカロリーが高いものを多めに持っていってほしいですね。市街地から山に入ってからは「石鎚スカイライン」の東端にある「岩黒レストハウス」くらいしかお店がありません。エネルギー切れでハンガーノックを起こさないためにも、十分な量を確保しておきましょう。

それから、ぼくはモバイルバッテリーも必ず荷物に加えています。

──最近のスマートフォンは性能も良く、あまり電池切れは心配ないような気もしますが、それでもモバイルバッテリーはあったほうがいいですか?

窪田:ちょうどロードバイクで走ることに慣れてきた中級者の頃、石鎚山系を一人で走行中にパンクした経験があるんです。もちろん、リペアのキットは用意していましたし、タイヤの修理はできたのですが、これが転倒して骨折、動けなくなるような事態だったら……と考えると背筋が寒くなりました。

電波が届きにくい状態だと、通常よりスマートフォンのバッテリーの消耗が激しいんです。気温が低い場合も同様です。また、最近のライトやサイクルコンピューターは充電式のものも多い。だから、万が一に備えるという意味でも、モバイルバッテリーがあると安心だと思います。

ここは本当に日本? スケールの大きさに息を呑む絶景

──窪田さんから見た石鎚山系サイクリングコースの特徴を教えてください。

窪田:数ある愛媛県のサイクリングコースのなかでも、とにかく高い山々に囲まれているイメージがあります。最高峰の石鎚山をどこから目指しても、ずっと雄大な景色が続いていく。

いくつかルートがありますから、スタート地点を自分で選ぶことができるのも魅力的ですね。西条市や東温市、久万高原町など、愛媛県内のいろいろなエリアからチャレンジできるのは、石鎚山系サイクリングコースならではの面白さだと思います。

さまざまな高山植物も見られる

さまざまな高山植物も見られる

──複数のルートは、それぞれ難易度も異なるわけですね。

窪田:そうですね。石鎚山のサイクリングコースを完全に走破しようと思えば、全長が146.6km、高低差が900mもあるわけですから、上級者向けのハードなコースになるのは間違いありません。でも、自分の実力に合わせて工夫をすれば、初級者から中級者でも十分に楽しめるんです。

たとえば、石鎚スカイラインの終点にある土小屋まで車で行き、そこをスタート地点にして「UFOライン(町道瓶ヶ森線)」を走ってみる。最初はルート最高地点である「瓶ヶ森」をゴール地点に設定すれば、片道で約11kmですから、往復でも約2時間程度のライドになります。

尾根沿いを走るUFOライン(町道瓶ヶ森線)

尾根沿いを走るUFOライン(町道瓶ヶ森線)

窪田:このコースであれば、そこまで無理な高低差はありませんし、石鎚山系ならではの美しい景色も十分に堪能できます。何度か走ってみて、少しずつ距離を伸ばしていく方法がおすすめです。

──窪田さんのような地元のサイクリストから見ても、やはり「UFOライン」は特別ですか?

窪田:あの絶景ルートは、ほかではまず体験できないです。途中までは森に囲まれた普通の山道なのですが、ある標高に達すると、植生分布の変化によって木々が一切なくなり、眼の前がパッと開ける瞬間が訪れるんですよ。

普段は霧に包まれていることが多いんですが、運よく天候に恵まれれば、遠くの太平洋も瀬戸内海も両方が一望できるポイントもあります。「ここは本当に日本なの!?」と息を呑むようなスケールの大きさは、ぜひ体験してもらいたいですね。

晴れていれば、山々の向こうに太平洋が見える

晴れていれば、山々の向こうに太平洋が見える

──自分の足でそれだけの絶景にたどり着くのは、一生の思い出になりそうですね。

窪田:すごいですよ。雲が自分の目線と同じ高さにある光景は、何度見ても素晴らしいと感じます。

ルートで出会う絶景のなかでも、ぼくは瓶ヶ森の一面に広がる笹原が好きです。初夏の青々とした様子を見ながら走ると、何ともいえない心地良さがありますし、秋が訪れて枯れてきた頃も独特の風情があって美しいんです。

瓶ヶ森に広がる笹原

瓶ヶ森に広がる笹原

石鎚山系へのチャレンジに備えて、身につけておくべきは「姿勢力」

──石鎚山系サイクリングコースを走るうえで、サイクリストが行っておくべき準備を教えてください。

窪田:まずは、自分が走るコースをしっかりイメージすること。スタートからゴールの間に、どんなアップダウンがあって、走りきるにはどのくらいの体力や技術が必要なのか。フィジカルのトレーニング方法は、コースから逆算して決めていくべきなんです。

それから、走行中はどんなときでも「目の前の状況を楽しむ」ことをおすすめします。たとえ悪天候に見舞われたとしても、その日だけのスペシャルな出来事だと考えれば、モチベーションは下がりにくい。道のりはキツければキツいほど思い出に残りますし、ゴールしたあとの達成感は格別なはずです(笑)。

──自然が相手ではどうしようもないこともありますものね(笑)。フィジカルの面で普段から重点的に鍛えているのは、やはり体幹になりますか?

窪田:そうですね。ロードバイクで走るときに大切なのは、股関節から背骨、背骨から肩甲骨までの一連をスムーズに動かせるようにすること。強靭な筋力や柔軟な股関節など、一部分だけではダメなんです。それらを動かす大元となる体幹をいかに鍛えるか。

自転車にとって、「エンジン」となるのは自分の身体です。長く走るための持久力は、日々の基礎的なトレーニングで身につけるしかないでしょう。

──長い距離を走るにあたって、トレーニングのほかに気をつけておきたいことは何でしょう。

窪田:専門家による正しいフィッティングも大切ですね。自分に合ったサドルの高さやハンドルの位置などを知っておくことです。特にロードバイクはハンドルの上下やブラケットなど、場面ごとに握る位置が大きく変わります。当然、姿勢も異なりますから、それぞれ使う筋肉も違うんですよ。

ただ、どんな姿勢を取っていても、ベースになるのは体幹の強さ。普段から良い姿勢を座位や立位で保つようにすれば、それだけでもトレーニングになると思います。長時間にわたって自転車に乗り続けられる「姿勢力」を身につけてください。

姿勢って本当に大切なんです。そこを意識するだけで、ライドの楽しさがかなり変わってくると思いますよ。

愛媛の食や温泉をご褒美に。実力に合ったルートで楽しもう

──窪田さんが石鎚山系サイクリングコースを走る際、行っている準備運動はありますか?

窪田:必ず行う、簡単な体操がありますよ。まずは「200万円体操」。両足を肩幅くらいに開いて立ち、両方の掌を上に向けます。それぞれに100万円の札束を乗せていると想像しながら、静かに腰骨の上に手を置いてください。

窪田:そのまま膝を曲げて、上半身と下半身で手を挟み込み、ゆっくり身体を屈めていきます。

窪田:実際にやってみればわかりますが、このポーズで手を伸ばすと、ロードバイクに乗った姿勢に極めて近いんですよ。5回1セットを行うことで、足を上に引き上げる筋肉にスイッチが入るんです。重心が安定するだけではなく、下半身の強化にもつながります。

──これは背筋も伸びますし、腹筋にも自然と力が入りますね。ウォーミングアップにも最適です。

窪田:もう一つは「郷ひろみ体操」です。日本の歌手・郷さんがステージ上でジャケットを脱ぐときの、特徴的な動きからヒントを得ました(笑)。自転車に乗るときに「肩が上がりやすくて困っている」という相談を受けることが多いので、肩を下げるための体操を考えてみたんです。

まず両腕を胸の前に、カタカナの「ハ」の字に出します。次にジャケットを脱ぐように肘を支点にして両腕をパッと開いてください。そのときに掌を上にするのがコツ。これも5回1セットですね。そのまま静かにハンドルを握れば、肩が下がったまま、リラックスした姿勢で走り出すことができるはずです。

──ありがとうございます。最後に、これから石鎚山系サイクリングコースに挑戦を考えているサイクリストへメッセージをお願いします。

窪田:豊かな自然が堪能できる石鎚山サイクリングコースは、自分の実力に応じてさまざまなチャレンジができる絶景ルートです。愛媛県外から訪れる場合は、たとえば、西条市を拠点にして、石鎚連峰を水源とした「うちぬき」と呼ばれる名水を飲んでみたり、地元の誇る食やスイーツをライドのご褒美として楽しんだりしても面白いでしょう。

カレー屋の「POGO CURRY」や、クッキーがおいしい「とらや菓舗」へは、ぼくもよく足を運びます。サイクリストに嬉しい足湯を備えた温泉もありますので、ぜひ何度でも石鎚山系へ走りに来てください。

INFORMATION

POGO CURRY

  • 住所:愛媛県西条市大町1760-2 久門ビル1F
  • アクセス:JR伊予西条駅から徒歩約10分

INFORMATION

とらや菓舗

とらや菓舗

  • 住所:愛媛県西条市大町856-13
  • アクセス:JR伊予西条駅から徒歩1分

PROFILE

窪田 三思(くぼた さんし)

1974年愛媛県松山市生まれ。トレーナー、サイクリスト。サイクリストのためのコンディショニングや姿勢改善、体幹トレーニング指導を得意とする。スポーツクラブのフィットネスインストラクターとして14年間勤務。通算5,000回を超えるグループレッスンの経験を持つ。日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー、メンタルパワーパートナー協会認定メンタルコーチ、日本ペップトーク普及協会ファシリテーター。

http://vortex-fitness.club/trainer_dtl_001.php

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