愛媛県の中心地・松山市は、3000年の歴史があるといわれる道後温泉のほか、松山城やグルメも楽しめる人気の観光地。日本を代表する小説家・夏目漱石の『坊っちゃん』の舞台としても知られています。
松山市の中心部はバスや路面電車が走っており、多くの観光客が利用しています。しかしその旅に「自転車」を取り入れれば、楽しみはさらに深まることに。
そこで松山市で生まれ育ち、いまも暮らすMTBライダー・西山靖晃選手に、松山・道後観光を自転車で楽しむべき理由、自転車に乗る際に気をつけるべきポイント、地元の人だけが知る穴場スポットなどを教えていただきました。
松山市は、約51万人が暮らす四国最大の都市。約400年前につくられた松山城を中心に発展した旧城下町で、日本最古・3000年前から続くといわれる道後温泉のほか、日本を代表する文学者・夏目漱石や正岡子規のゆかりの地でもあり、「国際観光温泉文化都市」の指定を受けています。
コンパクトシティー構想によって、駅前デパート、巨大なアーケードを持つ「大街道商店街」のほか、松山総合公園、坊っちゃんスタジアム、愛媛県美術館、子規記念博物館など、さまざまなスポットが半径1.5kmほどのエリアに集中しており、楽しむことができます。
旧城下町である松山市街は、京都のように縦と横の通りが交差する街並みとなっています。しかし細い路地が多く、一方通行も少なくないため、地元の人以外が車で移動するのはやや不便。
路面電車やバスを乗り継いで移動する人も多いですが、ルートが主要な道、スポットに偏ってしまいます。
そこで、おすすめなのが自転車。平坦でコンパクトな松山市内を気軽に散策することができ、細い路地に隠れたローカルスポットにもスムーズにたどり着けます。もちろん少し離れた道後温泉に行くことも可能です。
松山市内には、松山駅や松山城、大街道商店街の近くに市営のレンタサイクルポートがあり、自転車を貸し出しています。
シティーサイクルだけでなく、スポーツサイクル、電動機付き自転車も用意。スポーツサイクルはシティーサイクルよりも軽快に走れるので、サイクリングを楽しむのに最適です。
また、自分の自転車で松山を楽しみたい人に朗報なのが、松山空港に用意されているサイクルステーション。自転車を空輸する際に使う輪行袋の預かりサービス、工具の貸し出しサービスのほか、自転車の組み立てや空気を入れるスペース、更衣室も完備しています。
それでは自転車で松山市内を観光する場合、具体的にどんな楽しみ方があるのでしょうか? 松山市で生まれ育った若手MTBライダーのホープ、西山靖晃選手に聞きました。
西山:まずはやはり外せないのが道後温泉。路面電車やバスで行くこともできますが、市内中心部から自転車で向かっても15分〜30分程度で行くことができます。
西山:路面電車の道後温泉駅の前に24時間営業の市営駐輪場が2か所あり、無料で利用可能。電車の時間を気にせず、ゆっくり温泉を楽しんで、夜風を感じながら自転車で宿泊先に戻れば、旅の気分もより深まると思います。
そして道後温泉まで自転車で行ったら、ぜひ訪れておきたいのが、道後温泉から山沿いに東に進んだところにある石手寺。
西山:ここは路面電車の駅からも遠く、道後温泉から歩いて20分ほどかかるのですが、自転車であればあっという間に到着します。
約1300年前につくられたこの寺院は、四国八十八か所巡りの第51番札所で、建築など文化財のほとんどが国宝、重要文化財に指定されています。また、お寺のなかにある洞窟も珍しく、見どころのひとつです。
西山:境内にある「五十一番食堂」では、こしあん入りの薄くて軟らかい「やき餅」が販売されていて、焼きたてがとても美味しいんですよ。
そして道後温泉とは反対の海側にも、自転車だからこそ楽しめるおすすめスポットが。JR松山駅から少し北にある堀江駅から海岸線に沿って南下すると、潮風を間近に感じながらのサイクリングを楽しめます。
西山:その先に現れる伊予鉄道高浜線の高浜駅、そして梅津寺駅は日本の有名テレビドラマのロケ地にもなった場所。梅津寺駅の近くには愛媛を代表するグルメ、鯛飯を食べられるお店もあります。このあたりの鯛飯は炊き込みご飯風なのが特徴なんです。
西山:さらにその先にある三津浜港には、なんと昔ながらの渡し船が通っており、対岸まで自転車を無料で渡してくれます。非日常的な体験を味わえ、旅情を感じられるのではないでしょうか。
西山:伊予鉄高浜線は土日祝日に運行するすべての列車がサイクルトレインとして運行されており、松山市駅までつながっているので、もし帰りに疲れても電車ですっと帰ってこられますよ。
最後にあらためて、自転車を安全に、快適に乗りこなすためのポイントをご紹介しましょう。
松山市や道後温泉は女性に人気の観光地ですが、自転車を楽しむのなら、シティーサイクルであってもスカートで乗るのはオススメできません。
走行中にタイヤやチェーンにスカートが巻き込まれる危険だけでなく、スカートに意識がいってしまい、周囲への注意力が散漫になるおそれもあります。
また、動きやすい服装であっても、コートやマウンテンパーカーの裾やウエスト周りの紐、シューズの靴紐、バックパックのストラップなど、自転車に引っかかるおそれのあるものは要注意。
紐は垂れ下がらないようにし、シューズの靴紐が長い場合はほどけにくいように、バックパックのウエストストラップは正しく締めましょう。
自転車は徒歩感覚で気軽に乗れますが、道路交通法上は軽車両。車道の左側を走るのが大原則です。しまなみ海道や松山市内の一部では車道の左側に自転車の通行帯があるので、その道を走れば問題ありません。
慣れるまでは車の近くを走るのは怖いかもしれませんが、交通量が多く危険なところでは、「自転車通行可」の歩道であれば走ることができます。歩道を走る場合は、歩行者優先で徐行しましょう。
自転車は、身体に合わせて各部のサイズを調整することで格段に乗りやすくなります。それが疲労を防ぎ、安全にサイクリングを楽しむことにもつながります。
簡単に調整できるのはサドルの高さ。多くの人は脚が地面につきやすいポイントを重視して低くする傾向がありますが、これは間違い。
サドルの高さは、シティーサイクルなら座った状態でつま先がつくぐらい高くするのが基本。これだけでかなり走りやすくなります。スポーツタイプならもっと高め。サドルに座った状態で膝を伸ばし、かかとがペダルにつくくらいがベストです。
自転車のタイヤの空気圧が低くなると、走りが重くなり、段差に乗り上げたときにパンクする危険性が高まります。適正な空気圧にすることは、軽快に走るためにも、パンクのリスクを減らすためにも重要です。走る前にタイヤにしっかり空気が入っているかチェックしましょう。
愛媛県は、日本のなかでも随一といっていいくらい「サイクリング」に力を入れている県。地元の人々の自転車への理解はとても深いので、想像している以上に快適なサイクリングを楽しめることでしょう。
今治を拠点に国内・世界のレースに参戦するチームジャイアント所属のMTBプロライダー門田基志選手が結成したMTBチーム「チーム山鳥」所属のMTBライダー。生まれも育ちも愛媛県松山市。門田選手とともに国内のレースや海外のレースにも参戦する若手のホープ。
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